それは、週末の夜に溜まっていた仕事をようやく終え、深夜二時にシャワーを浴びていた時のことでした。頭をシャンプーで泡立て、いざ洗い流そうとした瞬間に、お湯の勢いがふっと弱まり、数秒後には細い筋のようになって、最後には完全に止まってしまったのです。最初は一時的な水圧の変化かと思いましたが、いくらレバーを動かしても反応がありません。目には泡が入り込み、暗い浴室の中で私は途方に暮れました。なんとかタオルで顔を拭い、洗面所の蛇口も試しましたが、そこからも一滴の水も出てきません。マンションの深夜に水が出ないという状況が、これほどまでにパニックを引き起こすものだとは思いもしませんでした。私は慌てて服を着て、玄関の外に出てみました。廊下は静まり返っていましたが、よく見ると何軒かの部屋のドアから、私と同じように戸惑った表情の住民が顔を出していました。そこで初めて、これが自分の部屋だけの問題ではないと確信しました。私たちは言葉少なになぜだろうと話し合いましたが、答えは出ません。結局、私はスマートフォンで管理会社の緊急連絡先を検索し、震える指で電話をかけました。夜間窓口の担当者は落ち着いた声で、現在複数の住戸から同様の通報を受けており、業者がすでに向かっていることを教えてくれました。原因は給水ポンプを制御する基板のショートだったようです。復旧までの約三時間、私はキッチンにストックしていたミネラルウォーターでなんとか頭を流し、リビングのソファで不安な時間を過ごしました。水を自由に使えることが、どれほど高度なシステムに支えられた奇跡のようなことなのか、その夜私は身をもって知りました。ようやく蛇口からゴボゴボという音と共に水が出てきたのは、外が明るくなり始めた午前五時過ぎでした。あの時の水の冷たさと、心から安堵した感覚は一生忘れられません。この日以来、私は寝室に必ず数リットルの水と、非常用の簡易トイレを常備するようになりました。マンションという集合住宅では、自分一人の努力ではどうにもならないインフラの故障が深夜に起こり得ます。その事実に備えておくことが、都会で暮らす上での最低限の作法なのだと痛感した夜でした。