日々、数多くの水漏れ現場を駆け回るベテランの水道業者は、インターネットの情報を鵜呑みにした「中途半端なDIY」が招く悲劇を何度も目にしてきました。最も多い失敗例は、パッキンのサイズ間違いです。一見すると同じように見えるパッキンでも、厚みが一ミリ違うだけで、水圧がかかった瞬間に隙間から噴水のように水が漏れ出します。また、ホームセンターで購入した汎用品が、そのトイレのメーカー独自の特殊形状に合致せず、無理に取り付けたことで給水管のネジ山を潰してしまうという、取り返しのつかないミスも後を絶ちません。ある現場では、パッキン交換をしようとした住人が、固着したナットを力任せに回した結果、タンクを固定しているボルトごと陶器を割ってしまい、数万円で済むはずの修理が数十万円の便器交換になってしまった事例もありました。プロの業者は、作業の前に必ず「最悪の事態」を想定します。固着している場合は浸透潤滑剤を使い、時間をかけて慎重に緩めます。また、パッキンを交換するだけでなく、接続される金属パイプの歪みや、タンク内部の部品との連動性までを確認します。特にタンク内の水位を調整するボールタップと連動する箇所のパッキンは、わずかな厚みの変化が水位異常を引き起こし、今度はオーバーフロー管から水が溢れるという別の二次被害を招くこともあるからです。プロが使用するパッキンは、品質管理が徹底された純正品、あるいはそれを凌駕する信頼性を持つプロ専用品であり、取り付け時の微調整にも熟練の勘が活かされています。自己流でのパッキン交換は、成功すれば数千円の節約になりますが、失敗した時の代償はあまりにも大きいのが現実です。もし自分で挑戦するのであれば、まずは自分の限界を知り、少しでも「硬すぎる」「形が違う」と感じたら、即座に作業を中断してプロにバトンタッチする勇気を持つべきです。それが、結果として最も安く、確実に水漏れを止める方法なのです。