給湯器のメンテナンス現場に長年立ち続けている立場から申し上げれば、冬場の故障相談の多くは、適切な水抜きが行われていれば防げたものです。しかし、多くのお客様が「水抜きをしたはずなのに壊れてしまった」と嘆くケースも少なくありません。そこには、自己流の作業による「落とし穴」が潜んでいます。最も多い間違いは、水抜き栓を緩めただけで満足してしまい、蛇口を開けていないケースです。給湯器の配管内は真空に近い状態になりやすいため、蛇口を開けて空気を取り込まなければ、中の水は重力に従って排出されません。これは、ストローの中に飲み物を閉じ込めるのと同じ原理です。必ず家中の蛇口をお湯側に全開にし、配管内の水を完全に「落とす」必要があります。二つ目の盲点は、給湯器本体の水は抜けていても、そこに至る「給水管」の保護を忘れていることです。地面から給湯器までの露出した配管に水が残っていては、そこから凍結が始まり、その膨張圧が給湯器の接続部を内側から破壊します。私たちはプロとして、水抜き作業とセットで「配管の保温材チェック」を強く推奨しています。保温材が経年劣化でボロボロになっていたり、隙間があったりすれば、水抜きをしても凍結のリスクは残ります。三つ目の落とし穴は、水抜きを終えた後の復旧ミスです。寒波が去った後、再び使い始める際にいきなりスイッチを入れるのは危険です。まず水をゆっくり通し、蛇口から「ブシュッ」という音とともに空気がすべて抜けるのを確認してから、初めて電源を入れるようにしてください。空気が残った状態で点火すると、異音の原因や熱交換器の局部的な過熱を招き、寿命を縮めることになります。水抜きは「抜く時」も「戻す時」も、水の流れを物理的に意識した丁寧な所作が求められます。また、最新の節水型シャワーヘッドを使用しているご家庭では、シャワーヘッド内の止水スイッチによって配管内に水が閉じ込められやすく、水抜きが不十分になる傾向があります。作業時はシャワーヘッドを床に置き、スイッチを全開にして中の水がすべて抜けるように配慮してください。こうした細かなポイントを知っているかどうかが、愛着のある給湯器を十年、十五年と使い続けられるかどうかの分かれ道となります。
給湯器の専門技術者が明かす正しい水抜きの作法と盲点