住宅の修理現場に長年通っていると、お客様から「トイレの水が止まらない」という連絡をいただくことが頻繁にあります。その原因の八割以上は、タンク内にあるボールタップの不具合です。プロの視点から言わせてもらえば、ボールタップとは消耗品の集合体であり、十年も経てば何らかのサインを出し始めるものです。まず知っておいていただきたいのは、故障のサインの見分け方です。タンクの中を覗いた際、水面がオーバーフロー管という垂直に立っている筒の先端よりも上にある場合、それは確実にボールタップが水を止める役割を果たせていない証拠です。ボールタップとは本来、オーバーフロー管の先端から二、三センチ下の位置で止水するように設定されています。これを超えて水が溢れているなら、浮き玉が十分に浮いていないか、バルブ内のパッキンがボロボロになっていて隙間から水が漏れているかのどちらかです。また、逆にタンク内の水位が低すぎるのに水が供給されない場合も、ボールタップの可動部が固着している可能性が高いと言えます。最近のボールタップには「ダイヤフラム」と呼ばれるゴム製の薄い膜状の部品が使われているタイプが多く、ここが劣化すると水の出が悪くなったり、給水時にキーンという不快な高音(水撃作用)が発生したりすることがあります。私たち業者が現場で行うのは、まずこのボールタップが型番に合ったものかどうかを確認し、全体を交換するか、あるいは部分的なパッキン交換で済むかを判断することです。近年は、どのメーカーのタンクにも取り付けられる「万能型ボールタップ」という便利な製品も普及しており、DIYが得意な方であればご自身で交換することも不可能ではありません。しかし、ボールタップとは単に水を出したり止めたりするだけでなく、水圧の影響をまともに受ける部品でもあります。設置時の締め付けが甘かったり、アームの干渉を見落としたりすると、後で大きな水漏れに繋がることもあります。もし、浮き玉がタンクの壁に当たっていたり、内部の鎖と絡まっていたりすれば、それだけで正常な止水ができなくなります。ボールタップの健康状態を保つことは、家計を守ることと直結しています。月に一度、掃除のついでにタンクの蓋を開けて、水位が正常な位置にあるか、異音がしていないかを確認する。そのちょっとした習慣が、高額な修理費用や水道代の無駄遣いを防ぐ最善の策となるのです。プロとしてのアドバイスは、違和感を覚えたら放置せず、まずはボールタップという部品の状態を自分の目で確認すること、これに尽きます。
水道のプロが教えるボールタップの故障を見抜くためのポイント