冬休みの帰省や海外旅行、あるいは出張などで数日間家を空ける際、住宅管理において最も見落とされがちなのが給湯器の状態です。住人が不在の家では、お湯を使うことがないため配管内の水が滞留し、動きのない水は動いている水よりも遥かに凍結しやすくなります。たとえ出発の日の気温が穏やかであっても、滞在中に予期せぬ強い寒波が到来することは十分に考えられます。誰もいない家で給湯器が凍結破裂してしまえば、発見が遅れ、床下への浸水や階下への漏水といった、建物の構造そのものを揺るがす深刻な被害に発展しかねません。こうした最悪のシナリオを回避するために、長期不在時の水抜きは必須のルーティンと言えます。作業の手順は論理的かつ着実に行う必要があります。まず、給湯器の電源スイッチを切り、可能であれば電源プラグを抜いて、ヒーターの空焚きや電気系統のトラブルを防ぎます。次にガスの元栓を閉め、給水元栓を完全に閉じて水の供給を断ちます。ここからが最も重要なプロセスですが、家中のすべての蛇口を全開にし、配管内の水をすべて排出させます。この際、混合水栓の場合は必ずお湯側にレバーを倒しきることがポイントです。その後、給湯器本体の下部にある水抜き栓を一つずつ慎重に緩めていきます。水抜き栓を外すと、中から残っていた水が勢いよく流れ出してきますが、これによって内部の空圧が抜け、完全に水が排出されます。外した水抜き栓は、帰宅時にすぐに戻せるよう、ビニール袋に入れて給湯器の横にテープで留めておくなどの工夫をすると良いでしょう。また、水抜きを終えた後でも、排水トラップと呼ばれる部分には水が残っていることがあり、そこが凍結して破損することもあるため、余裕があれば不凍液などを流しておくとさらに安心です。長期間の不在は、家というシステムを静止させる行為です。再び帰宅した際に、冷え切った体を暖かいお湯で癒せる状態を保つためには、出発前のわずか十分の準備が決定的な差を生みます。水抜きを「念のための作業」ではなく、「家を守るための義務」として捉えることで、旅先でも天候を気にすることなく心からリラックスして過ごすことができるようになるのです。
冬の長期不在時に必須となる給湯器の水抜き術