建物も人間と同じように、年を重ねるごとに至る所に不調が出てきます。特にトイレ周りは、毎日何度も大量の水を流し、常に湿気に晒される過酷な環境にあるため、築十年を過ぎたあたりから水漏れのリスクが急激に高まります。トイレの床付近で漏水が起きる背景には、隠れた部品の経年劣化があります。例えば、便器を床に固定しているボルトの錆びや、排水管と便器の密閉を担うゴム製品の硬化です。新築時には柔軟だったゴムも、十年、二十年と経過するうちにカビや薬品、経年変化によってプラスチックのように硬くなり、やがてひび割れて隙間を作ります。そこから流した水が漏れ出し、床を濡らし始めるのです。また、床材そのものの劣化も見逃せません。長年、尿の飛び散りや掃除用洗剤に晒された床材は、防水性能を失い、少しの水漏れでも内部まで浸透しやすくなります。これを予防するためには、定期的な点検が欠かせません。具体的には、十年に一度は専門業者による総点検を行い、目に見えない部分のパッキンやボルトを予防的に交換しておくことが理想的です。また、日々の生活の中でできる予防策としては、トイレの掃除時に便器と床の隙間に汚れを溜めないこと、そしてコーキング剤などで隙間を埋めないことです。一見、隙間を埋めれば水漏れを防げそうに思えますが、実は逆効果です。内部で漏水が起きた際、コーキングがあると水の出口が塞がれ、床下にすべて流れ込んでしまい、発見が大幅に遅れる原因になるからです。床の濡れを早期に察知できるように、隙間はあえてオープンにしておき、常に乾燥していることを確認するのが正しい管理方法です。家を長持ちさせるためには、トイレの床という小さな面積に対しても、長い時間軸でのメンテナンス意識を持つことが重要です。床が柔らかくなっているということは、下地の合板が水分によって繊維同士の結合を失い、構造的な強度を喪失していることを意味します。この状態を放置すると、ある日突然、便器の重みに床が耐えられなくなり、便器が傾いたり、最悪の場合は床が抜け落ちて下階や床下へと脱落する事故に繋がりかねません。私の知るある主婦は、この「フカフカ」を感じたその日に業者を呼びましたが、結果として床の全面的な張り替えが必要となり、一週間の工期と数十万円の費用がかかりました。
築年数とともに増えるトイレ床付近の漏水リスクと予防