住宅の給排水設備のメンテナンスを長年手がけている立場から申し上げますと、給湯器のトラブルで最も困るのは、お客様が元栓の場所を把握していないために、修理に伺うまでの間に被害が拡大してしまうケースです。給湯器の元栓がどこにあるのか、その見極めにはいくつかのプロのコツがあります。まず、給湯器の下から出ている配管の中で、最も「冷たい」管を探してください。冬場であれば結露していることも多く、その管が水を供給する給水管です。その管を辿っていくと、必ず止水用のバルブが見つかります。形状は多岐にわたりますが、一般的にはレバーを九十度倒すタイプか、ネジを時計回りに回すタイプです。特に注意が必要なのは、給湯器に配管カバーが付いている場合です。外観を美しく保つために設置されるこのカバーですが、緊急時にはこれが障壁となります。カバーの隙間から手を入れて操作できることもありますが、基本的にはプラスドライバーでカバーを外して作業するのが確実です。また、マンションなどのパイプシャフト内にある場合、給湯器の元栓だけでなく、家全体の水を止める主バルブがすぐ近くにあることが多いです。もし給湯器の元栓が固着して動かない場合は、迷わずその主バルブを閉めてください。これにより家中すべての水が止まりますが、給湯器からの漏水を止めることが最優先です。さらに、寒冷地にお住まいの方は、元栓が地面の下、いわゆる凍結深度よりも深い場所に埋まっていることがあります。この場合は、地上に飛び出している長いハンドル状の「水抜栓」を操作することになります。専門家として強調したいのは、元栓を見つけた後のメンテナンスです。年に一度は元栓を少しだけ回して、動作を滑らかに保っておくことを強くお勧めします。金属同士が錆び付いてしまうと、いざという時に水道業者でも壊さなければ開閉できなくなることがあるからです。給湯器の元栓は、住まいの安全を守るためのブレーキのようなものです。その場所と状態を常に把握しておくことは、そこに住む人の責任であり、安心な暮らしを送るための基本中の基本なのです。
水道設備の専門家が教える給湯器の元栓の見極め方と注意点